ヴィクトリアンの望遠鏡から覗く楽園 / Antique Davis Derby Brass Telescope with Tripod Stand

英国アンティーク、三脚にセットされた真鍮製の望遠鏡。



イングランド東部の大きなアンティークフェア。
広い芝生の中ほどの白いテントの元、大きな自立式の望遠鏡を誇らしげにディスプレイしていたのは英国人の渋いおじいさまでした。

彼の取り扱っているものは古い望遠鏡、双眼鏡、コンパスに顕微鏡・・・。
つまり、男子の大好きなメカものがほとんど。

機能と意匠性が一体となったそれらのアイテムは、こちらとしても見逃せないもののうちのひとつ。
ゆっくりじっくり、眺めさせてもらいました。

おじいさまは絶妙のタイミングで話しかけてきます。

「それは学校用の顕微鏡。1930年代くらいかな」
「これは第一次大戦時のコンパス。革のケース付き。でもケースは第二次大戦くらいのものだね」

そんなおじいさまの一番のお勧めが、今回ご紹介する真鍮製の望遠鏡。

「これはいいよ。デイヴィスの物でヴィクトリアンの1880年くらい。回りの黒いところはベリーン、つまり鯨の髭でできている。こんなに伸びるし。」


コンパクトでありながら存在感溢れる、140年近い歳月を経た望遠鏡。
すっかり魅力に取りつかれ、手に入れてしまいました。


望遠鏡を最大に伸ばした時、真鍮の本体には以下の文字が刻まれています。

Davis
Derby

これがおじいさまの言っていた、デイヴィス・・・つまり「デイヴィス・ダービー/Davis Derby」というメーカー名。


このデイヴィス・ダービーは、現在もイングランド、ダービーに存在している機械メーカーです。


1779年、イングランド・リーズでガブリエル・デイヴィスが始めた光学機器や測量機器、製図の道具等の製作工場がデイヴィス・ダービーの始まり。後に跡をついだジョン・デイヴィスが1844年にダービーに工場を移転。鉄道用のランタン照明などを手掛けるようになっていきます。現在はヨーロッパをはじめロシアや中国へ向けて工場のシステム設計や遠隔操作などのテクノロジーを供給している会社となっています。

長い歴史をもつデイヴィス・ダービーですが、今回ご紹介する望遠鏡は1880年代くらいの製造と思われます。

1880年代と言えばヴィクトリアンのやや後期。
1869年に開通したスエズ運河を、1875年に英国が手に入れ、多くの英国の船が太平洋へと渡り、アジアを支配してゆきました。グランド・ツアーと称して富裕層が未知の世界へと旅立っていくことが流行となっていた時代でもあります。
そんな時代に、コンパクトで高性能の望遠鏡は、大人気だったのではないでしょうか。
ひょっとしてこの望遠鏡も、紳士のポケットに入ってグランドツアーへと旅立っていったものかもしれません。
寒い英国に比べれば、アジアはまさに楽園のように感じられたのではないでしょうか。


さて、望遠鏡にセットされた三脚は真鍮製のもの。
これはデイヴィス・ダービーのものではなく、後年に所有者によってセットされたものとなっています。

一番上段、一番短い状態の時に見えている部分は黒く塗装されていますが、そこから延びてくる脚は鈍い金色。
全体としては黒とゴールドのツートーンとなっており、格調高くもクールな佇まいをみせています。


この三脚にそっくりなものが1930年代頃、ドイツの「W. Kenngott/ケンゴット」というカメラメーカーから販売されています。この三脚自体に「W. Kenngott」のロゴはついておりませんが、時代的にそのメーカーのものとみて間違いないと思われます。W. Kenngottの三脚は、「W. Kenngott D.R.P.」の刻印がおされて出回っていることが多く、「D.R.P.」とは「Deutsches Reichspatent」つまり「ドイツ帝国特許」を指しています。

今回ご紹介している三脚には「R」という1文字のみがみられます。これは「Reichspatent」の頭文字ではないでしょうか?
なんらかの理由でメーカー名までは刻印されず、「特許」とのみ表示されたドイツの三脚が英国に渡り、望遠鏡の持ち主が上手くセットしたのではないかと思われます。


黒とゴールドのツートーンは、デイヴィス・ダービーの望遠鏡の色合いとの相性も良く、間に挟まれたアジャスター木部のオークの杢目もあいまって、渋いダンディズムを感じさせます。


脚の伸縮は任意の位置で止められますので、小さくしてデスクトップに、中くらいでカウンターにディスプレイして、長く伸ばして床置きに・・・と、その大きさごとの雰囲気をお愉しみいただけます。


大英帝国の技術とドイツ帝国のものづくりとの幸せな結婚。
その後の世界史ではありえない組み合わせですが、この小さな望遠鏡の周りにだけは、お互いを引き立てあい高めあう、小さな理想郷が存在しているような気がします。


19世紀の郷愁と20世紀の激動を併せ持つ、アンティークの逸品をどうぞご堪能ください。


デイヴィス・ダービー オフィシャルサイト(英語版)
現在の会社の紹介のトップページにリンクします。
https://www.davisderby.com/


デイヴィス・ダービー オフィシャルサイト(英語版)
歴史を紹介しているページにリンクします。
http://www.davisderby.com/uploads/files/ThehistoryofDavisDerby.pdf




こちらからも拡大画像をご確認いただけます。


◆望遠鏡本体 England/三脚 おそらくGermany
◆推定製造年代:望遠鏡 c.1880年代頃 / 三脚 c.1930年代頃
◆望遠鏡本体:真鍮・ガラス・鯨の髭 / アジャスター木部 オーク・金属 / 三脚 真鍮・鉄
◆サイズ:望遠鏡本体直径約2.7cm 長さ約9-39.2cm /三脚(アジャスター木部含まず)直径約4.2cm 長さ約38.5-121.5cm
◆立てた時の高さ:三脚を最短にして立てた画像の状態 約49cm 三脚を最長にして立てた画像の状態 約130cm
◆重量:望遠鏡本体170g/アジャスター木部約130g/三脚約558g
◆在庫数:1点のみ


【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、塗装の剥げ、変色や錆、歪み等がみられます。詳細は画像にてご確認ください。
*望遠鏡は実際に見ることができますが、レンズには多少の汚れやくもりがみられます。ワレはございません。
*三脚の伸縮操作時に指を挟まないようにご注意ください。
*三本脚のうち1本は付け根のネジがやや甘くなっております。立てる時は何か滑り止めのようなものを下に置くことをおすすめいたします。
*三脚の伸縮操作時に古い油で手が汚れる場合がございます。一応クリーニングをしましたが、奥から出てきてしまうようです。どうかご了承ください。
*正確な計測や観測にはおすすめできません。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
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718-141

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大江戸骨董市
有楽町東京国際フォーラム

**ご来場有難うございました**


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有楽町東京国際フォーラム

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11月16-17日(土日)
谷中骨董市

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12月1日(日)
大江戸骨董市
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9-16時
当店は14時撤収開始
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(出店予定)


12月7-8日(土日)
谷中骨董市
延命院(前庭・駐車場)
東京都荒川区西日暮里3-10-1
10-16時
(7日は当店は15時まで)
天候により中止あり
(出店確定)


12月15日(日)
大江戸骨董市
有楽町東京国際フォーラム
9-16時
当店は14時撤収開始
天候により中止あり
(出店予定)


【ご注意】
大江戸骨董市は終了時刻が16時ですが、当店は手持出店のため、終了時刻には全て片付けている状態の完全撤収が求められています。当店は細かい物が多く時間がかかるため、2時間前には撤収を開始いたしますので、どうかご了承ください。大江戸骨董市はお早めのご来場をおすすめいたします。