馬を愛するが故に / Antique Walking Stick with Horseshoe Motif Grip
英国アンティーク、蹄鉄モチーフの仕掛けステッキ。
とても珍しいステッキのご紹介です。
英国の大きなアンティークフェアで、何度も素晴らしいステッキを譲っていただいているカッコいい紳士から・・・ではなく、そのお隣にいたお友達らしき紳士からのお品物です。
今回彼らはストールにステッキを並べていなかったので「ステッキはないですか?」と聞いたところ、「俺は持ってきてるよ!ちょっと待ってね」と、裏に止めていたキックスケーターで自分の車から取ってきてくれました。一抱えもあるステッキのなかから、何本かを選ばせていただきました。
そのうちの一本。
彼曰く「これは珍しいよ。マークはないけどスターリングシルバー。シャフトはバンブー(竹)。このピンクはコーラル(珊瑚)。そしてここが開くんだよ!ミッドヴィクトリアンくらいかな。」と、嬉しそうに説明してくれました。そのとおりにグリップの蓋を開ければ、なかからは鉛筆が現れました。
「なんのためのものですか?」と聞けば「もちろん競馬だろう!」と納得の答え。
英国で競馬が始まったのは12世紀頃。1540年、世界初の競馬場としてイングランド北西部にチェスター競馬場が建設され、これが近代競馬の始まりとされています。長い歴史をもつスポーツであり、社交の場としても重要な役割を果たしています。
余談ではありますが、英国のアンティークフェアの会場は競馬場がよく使われます。広くて設備が整っているので、レース開催日でなければ他のイベントも良く行われているようです。そしてこれは競馬場によるのですが、驚くほど美しい建物、お洒落なバーを備えた競馬場も珍しくありません。日本の競馬場とは異なり、上品な社交場としての機能を果たしている場所であることを実感いたします。
さて、もう少しお品物をみてみましょう。
グリップのトップには蹄鉄モチーフが立体的に表現されており、蹄鉄の釘の数と同じ7つの珊瑚がはめ込まれています。珊瑚は、世界各地で太古の昔からお守りとして身につけられていました。十字軍の兵士たちが十字架とともに珊瑚を身につけていたという伝説や、エリザベス2世の長女アン王女が、安産のお守りとして出産の際に珊瑚のネックレスを身につけていたといわれていることからも、珊瑚に対する信頼が伺えます。
このステッキの一番の特徴は、この蹄鉄モチーフがあしらわれている部分が開くこと。
側面についている凸部をぎゅっと押しながら、蓋をもうひとつの手で開く必要があり、若干固いですが、その分閉めるときには「カチッ」としっかりと閉まります。
ワクワクと蓋を開けば、そこには鉛筆が仕込まれておりました。現時点で入っている鉛筆は消しゴム付きのものですので、近年誰かが入れたと思われます。鉛筆は長さ約9.7cmですので、そのくらいの長さのものでしたら、他のものに差し替えていただいても良いかもしれません。
また、蓋裏には王冠と月桂樹のマークがみられます。詳細は不明ですが、この意匠は英国軍関係のバッジデザインなどでしばしばみることがありますので、ひょっとしてオーナーは軍関係の人だったのかな、と思います。
そしてシャフトは竹。英国アンティークで竹風に削ったステッキは時々見かけますが、本物の竹のものは初めて見ました。アジアの温帯・熱帯地域原産の竹は、だれかが持ち込んで栽培していない限り、ヨーロッパでは自生していません。軽くて丈夫な竹はステッキには最適な素材ですので、昔のヨーロッパの人々にとっては遥か遠い場所にある憧れの素材だったといえるでしょう。もちろん、世界中からいろいろな材を輸入していた英国ですので、竹のステッキがあるのも納得ですが、珍しいものであったことは間違いございません。
グリップ部分にシルバーのホールマークが無いこと、特別な仕掛けがあること、材も珍しいものであること、などなど考えあわせれば、恐らくは競馬が趣味の元軍関係の紳士のオーダー品だったのではないでしょうか。
作られた年代は、販売していた彼の言う通り、ミッドヴィクトリアン・・・1870年代頃としてご紹介させていただきます。
馬がお好きな貴方に。
1世紀以上前の英国から来た、特別なステッキはいかがでしょう。
持つほどに愛着がわく唯一無二の存在として、おそばに置いていただけたら幸いです。
こちらからも画像をご確認いただけます。
◆England
◆推定製造年代:c.1870年代頃
◆推定素材:竹、スターリングシルバー、珊瑚、金属、他
◆サイズ:全体長さ88.3cm グリップ直径約2.8cm
◆付属の鉛筆サイズ:長さ約9.7cm
◆重量:約179g
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、へこみ、歪みや変色がみられます。詳細は画像にてご確認ください。
*シャフトはしっかりとしています。体重をかけてもほとんどしなりません。
*石突き部分の金属はしっかりとついておりますが、ご使用の際は滑り止めのゴムキャップなどをつけることをお勧めいたします。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。