謎を秘めた19世紀の版画/BAXTERS Patent Oil Printing "Going to Church"



美しい杢目のローズウッド・フレームに収まった、シックな色合いの版画。


イングランド北部で手にいれたこのフレーム入り版画には、いくつもの謎解きが潜んでいました。

深みのある版画の図柄が魅力的なのはもちろんですが、不思議なのはその出自。右下には「BAXTERS Patent Oil Printing」「11 Northampton Square」の文字がみえます。

まず、ジョージ・バクスター/George Baxter(1804-1867)とはジョージアンからヴィクトリアンにかけてロンドンを拠点に活躍したアーティストであり、プリンター(版画師)。

1804年にサセックス、ルイスで版画師の息子として生まれたバクスターは、20才から父のもとで仕事をはじめ、23才で木版彫刻師のSamuel Williams の弟子となります。

1827年に自ら事業を始めたバクスターは多色版画において、大きな成功をおさめます。それまでも、多色版画はいろいろな手法で作られていましたが、バクスターの手法はそれらをもとにし、さらに発展させたものでした。生涯に多くの作品や図譜を残しました。



また、「11 Northampton Square」とは、ロンドン、クラーケンウェル/Clerkenwell、ノーザンプトンスクエア 11番地のこと。1844?1860年の間バクスターの家と工房があった場所です。


ただ、バクスターが得意としたのは多色刷りの版画。

もちろん、モノクロームのものも製作したのでしょうが、それにしてはこの版画は手が込みすぎているような気がします。

調べると、この主題は、もともとはやはり多色刷りで制作されたものでした。



The new baxter societyによれば、このブラウン色のみの作品はバクスター本人が亡くなったのちに作られたもの。

バクスターの死後、ほとんどの版木は息子であるジョージ・バクスター・ジュニアが彼の居地であるバーミンガムで保存していたといわれていますが、一部は散逸し、Mr.Rhodesがこの「Going to Church」のプレートを手にいれ、100枚のみブラウン・インクで刷ったものである・・・という記述がみられます。



可憐なお嬢様と、厳格そうな年長の女性。

お嬢様の手元には聖書のような冊子が、そして左手には教会がみえることから、おそらく二人は日曜日のミサに行くところなのでしょう。

この時代、特に身分の高いクラスでは、たとえ行き先が教会でも、若い女性が一人で出歩くことは厳禁とされていました。家族や親族、メイド、家庭教師、もしくはシャペロンとよばれる年長の女性が共に行動したといわれています。この年配の女性はドレスも立派で、お嬢様の肩に手をおいていることから、メイドとは考えにくく、
お嬢様のおば様あたりかと推測されます。

年配の女性の表情があまり明るくないのが気になることろですが、お嬢様の屈託のない表情、輝く瞳、そして木の葉が風でざわめく音が聞こえてきそうな背景など、見どころは沢山。

もともとは多色刷りのうちの一版なのでしょうが、その緻密な表現は一版でも十分な意匠性を感じることができます。
全体のなんともいえないアンバーなトーンと、版画特有のタッチがすべてを覆い、ひとつの存在感あるアートワークとして
深みのある空間を創り出しています。



さて、もうひとつの謎。


フレームの背板には、古い古い新聞の切り抜きと思われるものが貼られています。

タイトルは「500 VETERANS OF 1851」。サブタイトルに、「Visitors to the Great Exhibition Now see Persian Art Show」。

1851年といえば、ロンドン万国博覧会の年。

普通に考えれば、その万博で手に入れた絵の後に、記録のために当時の新聞記事の切り抜きを貼った・・・というところですが、版画の1898年の製作からすると計算があいません。


「Persian Art Show/ペルシャ美術展」の開催記録を調べてみると、ロンドンでは1931年にロイヤルアカデミーが主催したものがありました。

1851年から数えてなんと80年。

いくらなんでも・・・と思っても、消えかけた細かい字をよく読むと、「・・Wilson,the 94 years old」などという文もあります。1931年に94才なら、1851年には14才。十分思い出を語れる年齢。


想像ではありますが、1931年、ロイヤルアカデミー主催のペルシャ美術展にて80年前の万博を懐かしむ会が開かれ500人のヴェテラン(英語では老兵、の意味も持ちます)達が昔を懐かしんだ・・・という内容なのかもしれません。

その時に、なんらかの形で手に入れた1898年製造のバクスター・プリント。

銘木・ローズウッドの化粧張りが施された、シンプルながらも美しいフレームに丁寧におさめられています。

例えば、懐かしい友からの記念の品。二人の友情と思い出の記録に、老人はその日の新聞記事を背面に貼り付け、そっと部屋の壁に飾ったのかもしれません。



製作の由来、そして飾られた背景など、この1枚の版画には沢山のストーリーが秘められています。

存在する限り、まだまだ続くであろうストーリーに、是非あなたの1ページを加えてください。


*スマートフォン等でご覧いただいている方は、こちらのブログから拡大画像がご覧いただけます。


◆Englnad
◆推定製造年代:版画 1898年/フレーム1931年
◆素材:フレーム ローズウッド化粧張り /バクスター・プリント(1版のみ)
◆サイズ:幅19.2 高さ23 奥行き2.3cm(フレーム外寸)
◆在庫数:1点のみ


*参考サイト”the new baxter society”(英語版)
http://newbaxtersociety.org/features/2013oct.aspx
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謎を秘めた19世紀の版画/BAXTERS Patent Oil Printing "Going to Church"

916-010

58,000円(内税)

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有楽町国際フォーラム
大江戸骨董市(仮)
9:00-16:00
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(雨天中止)


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