神の誉れとなり隣人の守りとならん / Antique German Fireman's Helmet

ドイツアンティーク、消防士のヘルメット。




チェコのアンティークディーラーから譲り受けた、珍しいお品物のご紹介です。


黒いレザー張りに特徴的な突起とバッジをもつヘルメット。トップの突起は「コーム/Comb」と呼ばれるもので、庇は前後に在り、より頭部を護る工夫がされています。

そう、これはドイツの消防士のヘルメットです。


まず目に留まるのは中央に掲げられたバッジ。この説明からさせて頂きます。


中心のオーバルにあるのは下から炎、友愛と信頼を意味する「シェイクハンド」、そしてその上にあるのは「プロビデンスの眼」。「プロビデンスの眼」はキリスト教における意匠のひとつで、プロビデンスはキリスト教の摂理という意味で、神の全能の目を表しているとされます。光背や、三位一体の象徴である三角形としばしば組み合わせて用いられ、中世からルネサンスにかけて以降、三位一体の象徴として度々用いられてきました。フリーメイソンを表すともされますが、そのあたりははっきりとはしていないようです。

オーバルの周囲にはオークの葉が配されています。オークの葉は古くからドイツにおいて「勇気」と「誇り」を表しています。オークの葉と組み合わされているのは消防士の象徴でもある斧。

そしてボトムのリボンにはモットーが刻まれています。

「Gott Zur Ehr Zum Nachsten Zur Wehr」
「神の誉れとなり隣人の守りとならん」

*ドイツ語の文字記号表示ができませんのでご了承ください。


これは古くからの消防士のモットーとされ、ドイツにみならずオーストリア等のドイツ語圏で広く使われている言葉となります。


神の目のもと、友と協力しつつ斧をもって炎に立ち向かう勇気・・・そんな消防士の姿を象徴しているのではないでしょうか。




ここで少しだけドイツの歴史に触れてみましょう。


1871年から続いたドイツ帝国は第一次大戦の事実上の敗北による国情の悪化、それにともなう皇帝ヴィルヘルム2世の退位により終わりを告げ、ドイツは共和政へと移ります。戦後の1919年に憲法制定会議が行われた地がワイマール(ヴァイマル)であったため、首都も帝政時代と同じくベルリンであり、ワイマールが首都であったわけではないのですが、この共和制の時代はワイマール共和国と呼ばれます。(国号としては否定されています)

戦後ドイツは莫大な戦争賠償金のためインフレは天文学的な規模になり社会不安が増大しますが、やがて首相となったシュトレーゼマンによる「シュトレーゼマン外交」等により、ドイツの国際的地位は回復。1926年には国際連盟に加盟、国際的地位向上により経済も好転し「黄金の20年代」と呼ばれる時代となります。

ただ、復興の兆しが見え始めていたドイツ経済は1929年に始まる世界恐慌で再び暗転。1933年1月30日、ヒトラーが首相に就任し、ヒトラー内閣が成立します。その後のドイツの歴史についてはご存じのとおりとなります・・・。



今回ご紹介するヘルメットのバッジデザインは1900年代頃からみられるもの。バッジにはドイツを表すワシが入ったもの、自営団のイニシアルが入ったもの等々様々ですが、1933年以降のものは明らかに変化してきており、より軍隊に近い形状とハーケンクロイツの印が見られるものが多くなっていきます。


また、ヘルメット内側、コームを留める金具の回りには以下の文字がみられます。

J.G.LIEB
BIEBERACH.RISS

「BIEBERACH.RISS」とは「BIBERACH.RISS /ビーベラハ・アン・デア・リス」というドイツの都市の名前でしょう。そして「J.G.LIEB」について詳細は不明ですが、1900年頃に消防機器を製造していた会社の様です。

参考:「J. G. Lieb Biberach Feuerwehrausrustung」の広告の画像
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:J._G._Lieb_Biberach_Feuerwehrausr%C3%BCstung_1900.jpg



以上の事から、今回ご紹介しているヘルメットはドイツ帝国末期からワイマール共和国時代、1900年から1920年代頃のお品物であることが推測されます。



身を護るための実用的な工夫が凝らされた意匠、誇り高く掲げられたバッジ。
それらが配されたヘルメットを頭に、多くの消防士がわが身を賭して働いてきた積み重ねの一端が、今の世界を護っているような気がいたします。


コレクションとしてお手元に。火難から護るマスコットとして、ディスプレイしていただくのもよろしいかもしれません。


なによりも、人々を護るという矜持を、後々に繋げる象徴としてお手元においていただけましたら幸いです。




こちらからも画像をご確認いただけます。


◆Germany
◆推定製造年代:c.1900-1920年代頃
◆素材:金属、革
◆サイズ:幅約19.5cm 奥行き約23.9cm 高さ約19cm
◆ヘルメット内周:約55cm
◆重量:485g
◆在庫数:1点のみ


【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、錆びや変色、革の劣化等がみられます。詳細は画像にてご確認ください。
*ヘルメットの頭形は欧米人特有の縦長楕円です。サイズが合っても頭形により入らない場合がございますのでご了承ください。
*革紐の付け根部分の金具は左右異なります。もともとそうなのか、後年パーツが失われたのかは不明です。
*写真のスタンドは英国アンティークです。ヘルメットには付属しません。ご興味のある方はこちらからご覧ください。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。

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122-249

68,000円(内税)

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大江戸骨董市
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